スピーカーユニットメモ ~フルレンジユニット ダイトーボイス AR-7DX~ (その2)

前回の記事では、ダイトーボイス AR-7DXというフルレンジユニット単体の特性について見て行きました。

今回の記事では、実際にエンクロージャーに取り付けた場合の特性について見て行きたいと思います。



マトリックススピーカー MX-16AV

前回の記事でも少し触れましたが、もともとFOSTEX FE87が取り付けられていた長岡鉄男氏設計のマトリックススピーカー MX-16AVに、ダイトーボイス AR-7DXを取り付けてみました。


マトリックススピーカー MX-16AVについて

このスピーカーについて少々補足します。

「長岡鉄男 最新スピーカークラフト3 バックロードホーンの傑作」(絶版)という同氏著書に掲載されていた図面を元に作っています。

エンクロージャー構造は左右のバッフル板が斜めに取り付けられていることを除けば、普通のバスレフ型です。ブラウン管時代のテレビの上に設置して使うことを前提にしているため、奥行きは短めになっています。



MX-16AV(内部図)
MX-16AV(内部図)



著書の記事では触れられていませんが、図面を元に私が計算してみたところ、エンクロージャーの実効容量、ダクトの共振周波数は以下のようでした。
  • 実効容量:約9.8L
  • ダクト共振周波数:約75Hz

マトリックススピーカー MX-16AVについて詳しい情報をご覧になりたい場合は、「長岡鉄男 最新スピーカークラフト3 バックロードホーンの傑作」参照されると良いと思います。絶版本ですが中古で流通しているようですし、最寄の図書館に置いてある場合もあります。



MX-16AVに取り付けた様子
MX-16AVに取り付けた様子


つい出来心(というかほとんどいたずら)でコルクシートを貼ってしまったため、大変見た目が悪いです(汗)。まあ、貼り方が下手ってのもありますが。しかも、コルク破片がぽろぽろ落ちるため、部屋が汚れると言うおまけ付きです(汗々)。

本当はユニットを取り替えるタイミングで外装も何とかしようと思っていました。しかし私は花粉症なので、スギ花粉が大量に散布するこの時期に部屋の窓を全開にして換気しながら作業をするのは難しく、今回は断念しました。花粉の季節が終わったら何かするかもしれません。おそらくダイソーのフェルトを貼るだけだと思いますが(笑)。



AR-7DX(拡大)
AR-7DX(拡大)

取り付け穴サイズがFE87とほぼ同じだったため無加工で取り付けが可能でした。もともと開いていたネジ穴の位置もほぼ同じだったため、AR-7DXに付属していた木ネジを使ってそのまま取り付けています。

部屋を閉め切った状態でヤスリでユニット取り付け穴をガリガリ削って、大きさを調節するはめになるのでは?という、悪い予感が頭をよぎった(笑)のですが、その必要がなく助かりました。

本来は組み込み用の製品でしょうからフレーム加工も必要最低限のため、ネジで強く締め付けるとフレームが歪んでしまいます・・・。


周波数特性

周波数特性の測定を行いましたので、掲載します。

使用ソフトウェア:
多機能 高精度 テスト信号発生ソフト WaveGene V1.40 efu氏
高速リアルタイム スペクトラムアナライザー WaveSpectra V1.40 efu氏
入力信号:サインスイープ20Hz~20kHz
マイク位置:中央ユニット軸上1m
※マトリックススピーカーというLRチャンネル一体型の特殊なスピーカーのため、L+Rの信号を入力しています。



まずは参考資料として、FOSTEX FE87を取り付けたオリジナルの場合の周波数特性を掲載します。全てのケースについて、アンプのボリューム位置を同じ状態で測定を行っているため、相対的な能率の違いは比較できます。

周波数特性 MX-16AV(FE87)
周波数特性 MX-16AV(FE87)

さすがは長岡鉄男氏がこのユニットに適した設計をされているため、50Hz~17kHzをカバーしておりとても良い特性です。低域のレベルが高くそれが迫力につながるため、映画などの映像ソフト視聴に最適です。

90Hz付近のピークがダクト共振だとすると計算値よりだいぶ高くなっています。

考えられる理由としては、上で掲載した内部図を見てもらうと分かりやすいと思いますが、このエンクロージャーは中央ユニットの真後ろに奥行きの長いダクトがあり、そのダクトによってエンクロージャー内部が左右に分割されたような構造になっています。

そのため、ヘルムホルツ共鳴器の動作に関与している空気の実効容量がエンクロージャーの実容量より少なめになり、共振周波数が高めになっているのではないか?と思われます。

バスレフ型エンクロージャーでは、共振のトリガーとなるユニットとダクトは出来る限り離れているほうがエンクロージャー内のヘルムホルツ共鳴器の動作に関与する空気の実効容量が実容量に近づくため、計算値に近づきます。

MX-16AVの場合テレビの上に設置することを前提としているため奥行きを短くする必要があり、このような構造にならざるをえなかったのではないでしょうか?。

試しに、空気の実効容量をエンクロージャー実容量の70%として、6.9Lで計算したみたところ、共振周波数は89Hzとなりました。

17kHzまでフラットに出ているため、高域不足を感じることもありません。





次にダイトーボイス AR-7DX取り付けた場合の特性を掲載します。

前回のユニット単体の測定では、AR-7DXが全くの新品の状態で行っていました。スピーカーユニットはある程度使うことによって本来の性能を発揮するため、エージング過剰のFE87との比較ではフェアとは言えませんでした。

そんな訳で、気休め程度なのですがエンクロージャーに取り付けた状態で3日ほど慣らし演奏を行ってから測定しています。

周波数特性 MX-16AV(AR-7DX)
周波数特性 MX-16AV(AR-7DX)

ユニット単体での測定結果と同様に、200Hz付近から下が急降下してしまっています。そのため、90Hz~200Hz付近に大きな落ち込みが出来てしまっています。

80Hzのピークがダクト共振だと思いますが、FE87よりもいくぶん低めに出ています。AR-7DXの方がユニットの奥行きが短いので、その分エンクロージャーの実効容量が増えたからでしょうか?。その程度の変化で10Hzも変化するものなのか?理由は不明です。

見事にダクトの共振周波数を間違えたバスレフ型エンクロージャーの周波数特性になってしまっています。まあ、このエンクロージャーはFE87に最適化された設計になっているので、当たり前なのですが(笑)。

AR-7DX用として設計するとしたら、ダクト共振周波数は150Hzくらいにしたいところですね。

このエンクロージャーを改造して共振周波数を変更するとしても難しいですね。共振周波数を下げるのならダクトの断面積を狭くすればいいので簡単なのですが、周波数を上げるとなると、ダクト断面積を広くするか、ダクト長を短くするかになるので大改造になってしまいます。


周波数特性 MX-16AV(AR-7DX 1週間後)
周波数特性 MX-16AV(AR-7DX 1週間後)

ためしに1週間慣らし演奏を行って、もう一度測定してみました。

しかし、本当に誤差の範囲の違いしかありませんね。音質は変化しても周波数特性には表れないみたいです。



試聴

鳴らし始めは高域はきつめの音で低音もほとんど出ている感じがしません。そのため、周波数レンジが狭く感じます。1日くらい鳴らしていると高域のきつさが取れてきました。

このAR-7DXというユニット、音の傾向としてはEV 209-8Aに似ていますね。

209-8Aはさすがに口径20cmのユニットなので低域がもっと出ますが、パルプ製の軽量コーンで中域の質が良く、エッジが硬く動きにくい低域を出さない設計には共通するものがあります。また、高域もフルレンジにしては質が良く、この点も共通しています。

個性の強さでは209-8Aに軍配が上がりますが、AR-7DXも店内アナウンスなどが本来の利用目的である放送機材なのかもしれません。

製品ラインナップとしては、やはりダイトーボイス DS-100Fの弟分なのではないでしょうか?。DS-100Fも中域の質が良いので私の好みのフルレンジなのですが、やはり低域は弱い感じがあります。

中域の質が良いので、3Wayスピーカーのスコーカー(ミッドレンジ)として使うのもいいかもしれません。能率が86dBと低めなので、最近主流の重い振動板の低能率ウーハーに「能率的」には合いそうです。

しかし、軽量パルプコーンの反応の良い中域が持ち味のフルレンジなので「音質的」には合わないかもしれません。そういう意味では、相性の良いウーハー探しに苦労しそうです。




ミュージックソース別インプレッション

EV 209-8Aと似た傾向のスピーカーと感じたので、試聴するミュージックソースも同じものを使ってみました。

ジャズ

  • Sonny Rollins: Volume One, Volume two
209-8Aと似た傾向とは言っても個性は209-8Aよりもニュートラル寄りなので、サキソフォンの音は悪くはないですが、音像が手前に迫出してくる感じや、灰汁の強さは弱めですね。

小口径と言うこともありますが、高域はフルレンジユニットとしては良いほうだと思うのでハイハットは良いです。

ウッドベースは80Hzにピークがあっても胴鳴りは厳しいですね。




  • Organ-ized All-Star Tribute To The B-3 Organ
小口径フルレンジだけあって、中域の質が充実しているので、ハモンドオルガンの音に張りがあってよい感じです。



クラシック

  • Marie Claire Alain: Bach Organ Masterpieces
小口径ユニットなので能率が低めですし、低域もあまり出ていないので仕方がないですが、雄大さとか、荘厳さの再現は無理ですね。




  • Trevor Pinnock The English Concert: Pachelbel Canon And Gigue U. A.
209-8Aよりも個性が強くないのが幸いしているのか、中域が充実しているためバイオリンは意外と良いですね。小編成のクラシック楽曲をBGM的に流すのには向いているかもしれません。




  • Jose Miguel Moreno: Pieces Pour Theorbes Francaise
軽量コーンのフルレンジ全般に言えることなのかもしれませんが、クラシックギターソロは良いですね。

ただし、ギターの弦がはじける感じとても良いのですが、胴鳴りが弱いです。もう少し出てくれると良いのですが・・・。すごく歯がゆい感じがします(笑)。


ボーカル

  • 平沢進: 賢者のプロペラ,時空の水,白虎野
ボーカルものは中域の質の良さが生きて、声を張り上げたときの伸びが良いです。




まとめ

ここまで、ダイトーボイス AR-7DXをマトリックススピーカー MX-16AVを取り付けて試聴を行ってきました。

やはり痛切に感じたのが、当たり前のことですが専用で設計したエンクロージャーでないとユニットの性能を出し切れませんね(汗)。

AR-7DXは中高域の質は良いが低域が出ないユニットなので、ウーハーを追加するとか、エンクロージャーを工夫するなど、低域の特性を改善する対策を講じれば劇的な効果がありそうな感触があります。

個人的には、共鳴管型か、ダブルバスレフ型エンクロージャーを専用設計して鳴らしてみたいですね。置き場所がないのでやらないと思いますが(笑)。

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