Stereo2013年8月号付録 スキャンスピーク5cmフルレンジ使用 バックロードホーン製作 ~インピーダンス測定編~

Stereo誌2013年8月号付録のスキャンスピーク製5cmフルレンジ(5F/8422T03)を使った、バックロードホーン型スピーカーを作ってからしばらく時間が経ちました。

インピーダンス特性の測定は製作当時からやってみたかったのですが、測定できる環境が整っていなかったこともあり見送っていました。今回準備ができましたので、手始めは測定結果が特徴的な曲線となるバックロードホーン型エンクロージャーの方が面白いと思い、このスピーカーから測定してみることにしました。


スキャンスピーク5cmフルレンジ(5F/8422T03)バックロードホーン
スキャンスピーク5cmフルレンジ(5F/8422T03)
バックロードホーン


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Stereo誌2013年8月号付録 スキャンスピーク5cmフルレンジ使用 バックロードホーン製作

インピーダンス特性を測定する目的

私がスピーカーのインピーダンス特性を測定する目的は、「自分で設計したエンクロージャーが意図したとおりに動作しているかどうかを確認したい」ということです。なので、以下の点に着目して測定を行います。

  • 各周波数ポイントでの抵抗値の正確性にはそれほどこだわらない。
    ユニット単体特性(いわゆるT/Sパラメーター)を算出したい場合では正確に測定する必要がありますが、スペック不明のOEM向けユニットや、正体不明の中古やジャンクユニットを入手した場合など特殊なケースは例外として、スピーカークラフト向けにメーカーが販売しているユニットではスペックシートが公開されているはずなので、そちらを参照すれば正確な情報が得られるはずです。なので、実際のインピーダンス特性と比例関係にあるグラフが描けていれば良しとします。

    また、異なるメーカーのユニットを使ったマルチウェイスピーカーシステムを設計する場合、メーカー毎に測定基準が異なるため、スペックシートの同一比較が出来ないケースがありますが、そのようなケースでは同一ボリューム位置での音圧レベルが重要なので、周波数特性を測定する必要はありますが、インピーダンス特性を測定する必要性は低いと思います。

  • インピーダンスカーブ(グラフ曲線の形)に着目する。
    ユニットをエンクロージャーに取り付けた状態でインピーダンス特性を測定すると、そのエンクロージャーの動作によってグラフの曲線が変化します。これを確認することにより、エンクロージャーがどのような動作をしているのか(バスレフ、ダブルバスレフ、バックロードホーン etc...)が分かります。今回の測定では一番重要な項目です。

  • グラフの見やすさを優先する。
    インピーダンスの測定方法は、定電流駆動方式と、定電圧駆動方式の2種類があるようです。定電圧駆動方式の方が通常使用の動作に近いため比較的容易に正確な測定ができるようですが、グラフ曲線が上下反転して測定されるため、見易さを考慮して定電流駆動方式(長岡鉄男氏が行っていた方式)を採用することにしました。

とまあ、だらだらと書きましたが、実のところ趣味のスピーカークラフトの場合、完成して出てきた音が良ければ結果オーライなのです。エンクロージャーの動作を知りたくなるのは、完全に設計者の自己満足(笑)のためなので、その点はご了承ください(汗)。


やってみたこと(測定方法)

インピーダンスの測定方法は下記サイト様を参考にさせて頂きました。この場にて謝辞申し上げます。
Bond's Lab (ボンド君 氏)Bond's Lab (ボンド君 氏)

私が参考にさせて頂いたのは、「間違いだらけの?インピーダンス測定」という記事です。定電流駆動方式、定電圧駆動方式の違い、それらのメリット、デメリット、実際の測定方法が詳しく掲載されています。また、T/Sパラメーターの解説記事や、ヴィンテージスピーカーのレストア記事なども充実しています。興味がある方はぜひともご一読ください。

詳しくはBond's Lab 様の記事をご覧になって頂くとして、ここでは私がやったことを簡単に説明します。

使用した機器・ソフトウェア

  • パソコン(自作機)
    [スペック]
    CPU:AMD Phenom9600 Quad Core Processor@2.3GHz
    MEMORY:8GB
    OS:Windows 7 Home Premium 64bit SP1

  • USBオーディオインターフェース:behringer(ベリンガー) UCA202

  • プリメインアンプ:ONKYO A-924

  • ソフトウェア
    多機能 高精度 テスト信号発生ソフト WaveGene Ver 1.50 (efu 氏)
    高速リアルタイム スペクトラムアナライザー WaveSpectre Ver 1.51 (efu 氏)
    efu's page (efu 氏のソフトウェア公開ページ)efu's page (efu 氏のソフトウェア公開ページ)


インピーダンス特性の測定方法
インピーダンス特性の測定方法(定電流駆動方式)

インピーダンス特性の測定方法を示したダイアグラムです。要点をかいつまんで説明すると以下のようになります。
  • WaveGeneでサインスープ信号を生成。
  • サインスープ信号をUSBオーディオインターフェースのLINE OUTより出力。プリメインアンプのLINE INに入力。
  • プリメインアンプのスピーカー出力の+側に1kΩのセメント抵抗を直列に入れて、測定対象スピーカーの+端子に接続。
  • 測定対象スピーカーの+端子と-端子の間で発生する電圧を、USBオーディオインターフェースのLINE INに入力。
  • LINE INに入力された信号をWaveSpectraでグラフにプロットする。


behringer(ベリンガー) UCA202
USBオーディオインターフェース
behringer(ベリンガー) UCA202

今回インピーダンス特性の測定に使用した、USBオーディオインターフェース behringer(ベリンガー) UCA202です。周波数特性の測定にも利用しています。普段はパソコンで音楽を聴くためにも使っています。ヘッドフォンアンプとしても使えるのでなかなか便利です。(ただし、電子楽器に分類される製品なので、S/PDIFを備えますが、DolbyDigitalなどのCodec圧縮されたビットストリーム出力はできないようです。)

USBオーディオインターフェース behringer(ベリンガー) UCA202のレビュー記事はこちら


インピーダンス測定ボックス
インピーダンス測定ボックス

インピーダンス測定用の専用ボックスを作ってみました。ダイソーのブリキ缶灰皿(108円(税込み))を利用しています。内部配線は上のダイアグラムのとおりになっており、1kΩのセメント抵抗もここに入っています。


お手製プローブ
お手製プローブ

測定対象のスピーカーに接続しやすいように、ワニ口クリップを使用したお手製のプローブを作ってみました。ハンダ付けした部分が大きくなり過ぎて、カバーがうまく取り付けられていません。みっともないです・・・(汗々)。


測定に当たっての注意点

ここでは実際に測定を行う上での注意点を掲載します。

サインスイープ信号の出力レベル設定

サウンド設定(再生-スピーカー)
サウンド設定(再生-スピーカー)

コントロールパネル -> ハードウェアとサウンド -> サウンド を開きます。再生タブ -> スピーカー(この場合は既定のデバイスになっているBEHRINGER USB WDM AUDIO 2.8.40) を選択。プロパティ(P) ボタンを押します。


サウンド設定(再生-スピーカー-レベル)
サウンド設定(再生-スピーカー-レベル)

スピーカーのプロパティ -> レベルタブ -> ボリュームコントロール を"100"にします。


入力レベル設定

サウンド設定(録音-ライン入力)
サウンド設定(録音-ライン入力)

コントロールパネル -> ハードウェアとサウンド -> サウンド -> 録音タブ -> ライン入力(この場合は既定のデバイスになっているBEHRINGER USB WDM AUDIO 2.8.40) を選択。プロパティ(P) ボタンを押します。


サウンド設定(録音-ライン入力-レベル)
サウンド設定(録音-ライン入力-レベル)

ライン入力のプロパティ -> レベル -> ライン入力 を設定する。図中では"7"になっていますが、詳細は後述します。


サウンド設定(録音-ライン入力-聴く)
サウンド設定(録音-ライン入力-聴く)

ライン入力のプロパティ -> 聴くタブ -> このデバイスを聴く のチェックを外す。このチェックが付いていると、ライン入力された音声を再生(ライン出力)します。今回はライン出力がライン入力に接続されているループ状態になっているので、チェックが付いていると発振すると思います。


信号生成ソフト(WaveGene)の設定

WaveGene設定
WaveGene設定

使用する発振器はWave1のみです。なので、他の発振器はすべて 「OFF」 にしておきます。

Wave1設定

  • 「バー」ボタンを押して、図の上段にあるバー状のWave1詳細設定画面を表示します。
  • 「Log」のチェックを外します。これでリニアスイープになります。
  • 「スピード」スライダーのつまみを一番左に移動します。これでスイープ時間が最長の1200秒(20分)になります。
  • 下段の「スイープ信号開始周波数」スライダーを一番左の0Hzにします。私は0Hzにしてみましたが、20Hzでも問題ないと思います。
  • WaveGene本体画面のWave1の設定を出力レベル「0dB」、変調率「0%」にします。「スイープ」にチェックを付けます。図中では出力チャンネルが「R」になっていますが、これは各自環境に合わせて適宜変更してください。

Wave2設定

Wave2の設定を「サイン波」、「20000Hz」、「0dB」、「0%」にします。これはWaveGeneの仕様で、Wave1の「スイープ」にチェックが付いている場合、スイープ信号の開始周波数をWave1のパラメータとして、終了周波数をWave2のパラメータとして設定するからです。

ちなみに、出力レベルや、変調率も設定すればスイープ信号のパラメータとして有効になります。今回の場合ではスイープ信号発生時に徐々にレベル、変調率を変化させる必要がないため、開始、終了とも「0dB」、「0%」としています。


キャリブレーション

インピーダンス特性(セメント抵抗200Ω)
インピーダンス特性
(セメント抵抗200Ω)

上で掲載したダイアグラムの測定対象スピーカーの位置に200Ωのセメント抵抗を接続し、サインスイープ信号を測定します。その測定結果を見ながら、スペアナの0dBの位置が200Ωになるように、上で説明したライン入力レベルと、プリメインアンプのボリュームを調整して合わせます。

私の場合では、プリメインアンプのボリュームが"12時"の位置で、ライン入力レベルが"7"のときに、スペアナのグラフが0dBで一定になりました。また、レベル調整しているときに、スペアナの波形表示が歪んでしまっている場合、過大入力のため正しく測定できませんので注意が必要です。波形が歪まない状態で、0dBにあわせる必要があります。

このグラフは、その時のキャリブレーション測定結果です。分かりづらいですが0dB付近に赤い線がほぼ水平に測定されています。使用したUSBオーディオインターフェスはベリンガー UCA202ですが、20Hz~20kHzがほぼフラットで良い特性ですね。

キャリブレーションの測定結果が高域にかけてなだらかにレベルダウンしてしまった場合、スイープ信号の出力時間が短いことが原因です。上で掲載した信号発生ソフト(WaveGene)の設定が正しいか確認してください。

確認ポイントとしては、「Log」チェックが外れているか、スイープ時間が1200秒(20分)になっているかです。これでも改善しない場合は、WaveGeneのスイープ時間をもっと長くするか、WaveSpectreのサンプルデータ数を下げる必要があります。WaveGeneのスイープ時間は上で掲載したWaveGene設定の信号発生時間(図では1200秒)を直接編集することにより変更できます。

私の測定環境では、WaveSpectreのFFT設定がサンプルデータ数:65536、窓関数:Hanning となっています。WaveSpectreのヘルプによるとサンプルデータ数:65536場合、20分でも時間が短いのですが、20Hz~20kHzまでほぼフラットに測定できているので、これで良しとしました。


測定結果

ここからは、Stereo誌2013年8月号付録 スキャンスピーク5cmフルレンジを使用したバックロードホーンの測定結果を掲載します。

インピーダンス特性(Stereo201308 ScanSpeakバックロード Lch)
インピーダンス特性
(Stereo201308 ScanSpeakバックロード Lch)

インピーダンス特性(Stereo201308 ScanSpeakバックロード Rch)
インピーダンス特性
(Stereo201308 ScanSpeakバックロード Rch)

上段が左チャンネル、下段が右チャンネルの測定結果です。縦軸(インピーダンス)がdB表示になっているので分かりづらいですが、0dBが200Ωなので、それの何倍かを計算すればインピーダンスを求めることができます。

一回の測定時間が20分と長いため、キャリブレーションを行った後に1発勝負で測定したのですが、思いのほかいいグラフが描けています。(キャリブレーションを含めると20分を最低3回測定が必要。実際はキャリブレーションで4回くらい測定しています。)

手持ちの長岡鉄男氏著書「長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術 こんなスピーカーみたことない」を確認したところ、氏が設計したバックロードホーンのD-58や、D-37のインピーダンス特性も、このような複雑な形になっています。

動作がバックロードホーンではなく音響迷路になった場合、ユニット単体の特性とほとんど同じピークが1つのインピーダンス特性になるはずなので、それとも違います。折り返しが多い直管の連結構造なので、長さ3m程度の1本の共鳴管として動作しているとも考えにくいので、バックロードホーンとして動作していると考えて問題なさそうです。

左チャンネルと右チャンネルで少々グラフにレベル差がありますが、これはユニットの個体差なのか、エンクロージャーの問題なのか、測定時の問題なのか不明です。

左チャンネルのインピーダンス特性に注目してみると、複雑なピークとディップがある低域より上のインピーダンスが一番低くなっている周波数帯域(700~800Hz付近)のインピーダンスが、0dB(200Ω)の位置から-28dBくらいなので、-28dB ≒ 0.0398倍ですから、 200(Ω)×0.0398 = 7.96(Ω)となり、スキャンスピーク製5cmフルレンジ(5F/8422T03)は公証インピーダンスが8(Ω)なので、意外と正確に測定出来ていると考えて良いのかな?。

高域にかけてインピーダンスがなだらかにレベルダウンしていますが、これはツィーターが並列に接続されているためです。フルレンジのみで測定した場合では、高域にかけて徐々にインピーダンスが上昇しているはずです。


終わりに

今回、初めてインピーダンス特性をやってみましたが、意外とうまく測定できたのではないかと思います。

入力レベルをパソコン側で調整したかったため、ラインアウト、ラインインともMMEを使ったのですが、Windowsのオーディオエンジン(カーネルミキサー)を通して音声出力すると波形が歪む問題があり、本当は使いたくありませんでした。

しかし、この記事を書いていて気づいたのですが、この測定の場合、ライン出力は最大レベル固定なので、ライン出力だけASIOを使って、ライン入力はMMEを使えばよかったかなと思いました。

オーディオエンジンで出力音が歪む問題は、どうやら複数のアプリケーションからの音声をミキシングした後のリミッター処理が悪さをしていることが原因らしく、ライン入力には関係なさそうなのです。

参考資料:藤本健 氏 【藤本健のDigital Audio Laboratory】第528回:「Windowsオーディオエンジンで音質劣化」を検証 -AV Watch【藤本健のDigital Audio Laboratory】第528回:「Windowsオーディオエンジンで音質劣化」を検証 -AV Watch


次回はそのあたりを改善しつつ、今まで製作した他のスピーカーも測定してみる予定です。


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